キノベス!キッズ2026で第1位に輝いた『ある星の汽車』(森洋子/福音館書店)。書店でも大きく展開されている話題作ということで、期待して手に取りました。
先に結論から書きます。わが家の感想は、「子どもに手渡して終わりの本」ではなく、「大人が隣で一緒に読むことで、何倍にも深くなる本」でした。
実際に親子で読んでみて感じたこと、子どものリアルな反応を、一つの読書記録としてお届けします。
どんな絵本?
静かな夜。一台の汽車に、たくさんの動物たちが乗り合わせています。
物語が進むにつれ、乗客は一人、また一人と汽車を降りていきます。どこへ行くのか、なぜ降りるのか、理由は語られません。
実は、降りていった動物たちはすべて「絶滅した動物」。各ページには絶滅した年がさりげなく描き込まれているのですが、予備知識がないと、まず気づけないと思います。
そして最後のページで初めて、この汽車が何を乗せていたのかが明かされる──そういう構成の絵本です。
大人として読んだ感想
途中までは「不思議な絵本」。でもそれが仕掛けだった。
予備知識なく読み始めた私は、恥ずかしながら途中までこの仕掛けにまったく気づきませんでした。
動物たちが静かに降りていくだけの、とても穏やかな絵本。「この話はどこへ向かうんだろう」と、少し不思議な気持ちのままページをめくっていきました。
読み終えてから分かったのですが、この「つかみどころのなさ」こそが、この絵本の大切な仕掛けなのだと思います。意味が分からないまま読み進めた時間があるからこそ、最後のページの重みが生まれる。よくある絵本の型とは違う、独特のリズムを持った一冊です。
「なぜ?」をあえて語らない構成
この絵本は、動物たちがなぜ絶滅したのかを説明しません。
一方で、アホウドリについてだけは後述に「保護活動の甲斐あって繁殖に成功した」とあります。
最初は「理由も書いてあればいいのに」と思ったのですが、子どもと読んでみて考えが変わりました。「なぜ?」が書かれていないからこそ、子どもが自分から調べたくなる。この余白は、親子の対話のために意図的に残されたスペースなのかもしれません。
子どもに、予備知識なしで読み聞かせてみた
わが子(小学生)に何も説明せず読み聞かせてみました。
最初の反応は控えめでした。絵のトーンが落ち着いていることもあって、様子見といった感じ。ところが読み進めるうちに、「どんな絵本なんだろう」「今までとは違った絵本だね」と、だんだん前のめりになっていきました。
登場する動物たちは、聞いたことのない珍しい名前ばかり。親子で「なんて読むんだろうね」と言いながらページをめくるのも、この絵本ならではの時間でした。
驚いたのは、一人目の動物が降りるページ。子どもが乗客のそばの数字に自分で気づいたのです。「これ、年だ」。続けて「生まれた年かな?」と推測していました。この時点では「絶滅」という発想はまだ持っていない様子です。
カエルの口から赤ちゃんが出てくる場面や、脚の小さな珍しい鳥の場面では「えっ、なにこれ!」と強い興味を示していました。珍しい動物たちとの出会いの場としても、確かな引力があります。
そして最後のページ。降りていった乗客たちが「絶滅した動物」だったと明かされると、子どもはようやく話の意味を理解しました。
ここからが、この絵本のすごいところでした。理解した直後、自分からもう一度最初のページに戻り、「なんでこの動物は絶滅したの?」と一匹ずつ理由を聞いてきたのです。
絵本には理由が書かれていないので、一緒にスマホで調べました。調べるたびに「かわいそう」とつぶやく子ども。アホウドリだけは保護されて新しい命が誕生したことを伝えると、そこは前向きに受け止めていました。
読み終えたあと、子どものほうから「『ある星』って、どこのことだろう?」とタイトルに疑問を口にしました。「どこだと思う?」と聞き返すと、少し考えてから、ぽつりと「地球」。
自分の力でタイトルの意味にたどり着いた瞬間でした。
絵は、文句なしに美しい
鉛筆画のような質感で、動物たちの毛並みや表情まで丁寧に描き込まれています。
子どもも「やさしい感じがする」という趣旨の感想を言っていて、これはその通りだなと思いました。ページを開くたびに新しい発見がある、力作です。
まとめ:親子で「一緒に読み解く」からこそ光る一冊
わが家の結論はこうです。
この絵本は、大人が「絶滅」や「環境」について解説しながら、隣で一緒に読むことで真価を発揮する本。絵本があえて語らない部分を、親子の会話で埋めていく楽しみがあります。
対象年齢の目安としては、数字を「年」として読み取れて、「絶滅」という言葉を説明すれば理解できる、小学校低学年くらいから。未就学のお子さんと読む場合は、大人が丁寧に補いながら読むのがおすすめです。
うちの子は、意味が分かった瞬間に自分から読み返し、一匹ずつ「なぜ?」を調べ始めました。この「調べたくなる余白」こそが、この絵本のいちばんの価値だと感じています。
これはあくまで、わが家が読んだ上での一つの見方です。同じ本でも、ご家庭によってまったく違う景色が見えるはずなので、ぜひ親子で確かめてみてください。
『ある星の汽車』森洋子(福音館書店)
同じくキノベス!キッズやMOE絵本屋さん大賞2025の受賞作も、これから順番に親子で読んでレビューしていく予定です。


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